住宅ローンの相談を受けたときに、借入先の選択肢として金融機関公式サイトから情報を得て、分からない場合は問い合わせます。住宅ローン選びは正しい情報をもとに行わなければなりませんので、情報の信頼性は重要なポイントです。
そのため、金融機関公式サイト以外からの情報はほとんど参考にしませんが、まれに参考にする場合でも、そのサイトの根拠を必ず見つけます。また署名入りの記事についても、その内容がご相談者の考え方に合っているかどうかなど総合的に考えた上で、優先順位を決めています。
信頼性のある情報をもとに判断することは、自分に合った住宅ローンを選ぶ大前提となります。その上で、住宅ローンの賢い7つの選び方と7つのワナを解説していきます。
住宅ローンの選び方7つのポイント
私が住宅ローンを選ぶ際にポイントとしている7つのポイントを紹介いたします。どのような住宅ローンを選べばいいか、基本的にこれから紹介する7つのポイントをもとに判断しています。
大まかには優先順位の高いポイントから紹介していますが、住宅ローン選びで重要なポイントは「金利」「諸費用」「保障」で、「火災保険」と「特典」は参考程度となります。詳しくはそれぞれの項目をお読みください。
(1) 住宅ローンを「種類」で選ぶ
住宅ローンの種類には、公的住宅ローンと民間住宅ローンに分けられます。公的住宅ローンは、財形住宅貯蓄が代表的です。地方自治体によっては住宅ローンの補助制度がありますが、利用できる人は限定されています。そのため住宅ローンを選ぶ人の大部分は民間住宅ローンを選ぶことになります。
特徴 | |
公的住宅ローン | ・民間住宅ローンより融資条件が緩やか ・財形制度の場合、導入している企業でしか利用できない ・固定金利型が中心 |
民間住宅ローン | ・住宅ローンの種類が豊富 ・物件評価基準は公的住宅ローンより緩やか |
ただ、住宅ローンの大部分を民間住宅ローンが占めていますので、住宅ローン選びにはあまり役に立ちません。そこで、住宅ローンの特徴で分けた住宅ローンの分類を紹介しておきます。
特徴 | |
社内住宅ローン | 大企業に多いですが、勤め先で住宅ローンの融資を受けられ、企業が一部の利息を負担している住宅ローンです。私のご相談者に限れば、東証一部上場企業にお勤めの人が利用しました。 |
提携住宅ローン | 住宅販売業者が窓口となり、提携している金融機関の住宅ローンを取り扱っています。一般で借り入れるより金利が優遇されています。 |
財形融資 | お勤めの企業で財形制度を導入している場合に利用できる公的住宅ローンです。 |
都市銀行 地方銀行 | ネット銀行の住宅ローンと比べると、金利や諸費用は高めです。融資金利や保証料は審査によって決まります。 |
ネット銀行等 | ウェブ完結の住宅ローンを中心に取り扱うネット銀行や銀行以外の企業が取り扱う住宅ローンです。 金利や諸費用など、比較的負担が軽くなっています。 |
勤務先との提携住宅ローンを利用できる人は限定的ですが、利用できる人は優先的に調べて、借入条件を確認してください。
(2) 住宅ローンを「金利タイプ」で選ぶ
住宅ローン選びで最初に決めておきたいのが金利タイプです。金利タイプは、変動金利型、全期間固定金利型、固定金利期間選択型の3つが基本です。フラット35は全期間固定金利型に該当し、変動金利型と固定金利型の両方で借り入れをするミックス型もあります。それぞれの金利タイプの特徴は次のとおりです。
特徴 | |
変動金利型 | 返済期間中に金利が変動するため、返済額が増えることがありますが、問題はどの程度の上昇まで許容範囲かを試算しておくことです。借り入れ直後の金利上昇でなければ、金利上昇リスクは意外と受け入れられる可能性があるため、検討する価値があります。 |
全期間固定金利型 | 借入期間中、金利が一定である金利タイプです。フラット35が代表的ですが、都市銀行など一部の民間金融機関でも取り扱っています。 |
固定金利期間選択型 | 主に2年~10年の間だけ固定金利型で、期間終了後に再び金利タイプを選びます。期間終了後の金利水準で決定するため、金利タイプ切り替え時に金利が上昇する可能性があります。10年固定金利型の場合、10年後の借入残高が十分減少していれば、金利上昇により利息負担額は軽減できるため、借入前にシミュレーションして、確認しておくといいでしょう。 |
ここで紹介した特徴は一般的なものであり、住宅ローンを選ぶポイントにしてしまうと間違った判断をしてしまう可能性があります。住宅ローンの金利タイプを選ぶ方法やポイントは次のとおりです。
・借入金額を増やすために変動金利型を選ばない。
・毎月の返済額を減らすために変動金利型を選ばない。
・子育て世代(返済額が一定で安心である)という理由だけで固定金利型を選ばない。
・変動金利型は金利が上昇したと仮定したシミュレーションをして、家計への負担を確認する。
・借入条件や家族の方針、考え方を聞かれる前に変動金利型や全期間固定金利型を勧めてくる人は信じるな(特定の住宅ローンを売りたいだけの可能性あり)。
(3) 住宅ローンを「返済方法」で選ぶ
住宅ローンの返済方法には、元利均等返済と元金均等返済があります。ネット銀行等を中心に元利均等返済しか扱っていない金融機関が多いため、自由に選択できない可能性はあります。総返済額をできる限り少なくしたい人にとっては元金均等返済がお勧めですが、そもそも取り扱っていない可能性もあり、元金均等返済を取り扱っている金融機関を軸に住宅ローン選びをすると、金利や諸費用など他の負担が増え、結果的に総返済額が増えることもあります。
そのため、金利や諸費用、保障を中心に金融機関を絞り込み、最終的な借入先で返済方法を選べる場合に検討しましょう。
ただ実際にシミュレーションして、どの程度差がでるのか確認した方が正しく判断できますので、一度、予定している借入条件で2つの返済方法の違いを確認するといいでしょう。
(4) 住宅ローンを「諸費用」で選ぶ
住宅ローンの諸費用には金融機関によって差がつく費用とあまり大差はつかない費用があります。登記費用や不動産取得税、司法書士への報酬など差がつかない費用は比較の際には省き、差がつきやすい「事務手数料」や「保証料」で比較します。
都市銀行や地方銀行は保証料メインで、ネット銀行等は事務手数料がメインですので、「保証料0円」とあっても、事務手数料で同額がかかる場合があり、比較する際には注意が必要です。
事務手数料は、固定の金融機関と「融資金額✕一定割合」とする金融機関があります。後者は融資金額が多いと費用が増えますので、一概にどちらがいいかはわかりません。
一方、保証料は融資金額と審査によって変わります。借入金額が多い場合、事務手数料は固定の方が負担は減りますので、どちらがいいかは借入条件によって異なります。
諸費用は住宅ローンの負担をできる限り減らしたいのであれば、必ず試算して確認しましょう。
(5) 住宅ローンを「保障」で選ぶ
「保障」は団体信用生命保険による保障内容のことです。契約者が死亡したり、所定の高度障害になったりするとその時点で住宅ローンの返済が免除される保障が従来からある団信保険で、一般団信と呼ばれています。この一般団信に所定のがん・心筋梗塞・脳卒中になると返済免除となる三大疾病保障付き団信もあります。一般団信と三大疾病保障付き団信は保険料無料(金利上乗せなし)の金融機関がほとんどです。
最近の団信は、全疾病保障付き団信まで保障内容が拡大しており、保険料無料の金融機関もあります。
保障を充実させる場合、金利に上乗せする形で保険料がかかる金融機関もあります。金利が変動する要因ですので、団信の保障を充実させる必要があるか決めてからシミュレーションしなければなりません。保障内容を充実させるかどうかのポイントは次のとおりです。
・すでに加入している保険で十分。
・すでに加入している保険を考えても保障内容を充実させたい。
・保障は充実させたいが、一般の保険も検討する。
「金利上乗せなし」の範囲内で選択する考え方もありますが、これだと負担を減らしたいだけで、家庭のリスクについて考えていないことになります。あくまでも今加入している保険を見直した上で、団信の保障内容を決定するのが原則です。
(6) 住宅ローンを「火災保険」で選ぶ
住宅ローンの利用することで火災保険料を割引する金融機関があります。地震保険も火災保険と同時に加入することができますが、少なくとも住宅ローンが完済するまで火災保険に加入することが条件となっています。
火災保険は必ずしも借入先から加入する必要はありません。火災保険料の割引があっても、元々保険料が高い可能性もあります。実際に、同じ保障内容でも40万円の差があったご相談者もいらっしゃいましたので、軽く見ることはできないのではないでしょうか。
火災保険料の割引があると選択肢は増えますが、基本的には自分で探して契約する方法で考えておきましょう。金融機関のサイトで火災保険料の割引を強調していたとしても、メリットになるかどうかわかりませんので、住宅ローンを選ぶ際のポイントにはなりにくいと考えています。火災保険料については金額を比較した方が確実ですので、物件が決まり次第、複数の保険会社に見積もりを依頼しましょう。
(7) 住宅ローンを「特典」で選ぶ
住宅ローンの特典に力を入れている金融機関もあります。住宅ローンを扱っているのは銀行だけではありませんので、イオン銀行のように買い物に特典をつけたり、楽天銀行のように楽天市場で利用できるポイントがついたりと様々です。
特典を売りにしている金融機関がありますが、金利や諸費用の差を埋めるほどの特典はほとんどありません。特典を比較する際には、できるだけ具体的な金額を出しますが、特典を中心に住宅ローンを選ぶ人は少ないのではないでしょうか。
住宅ローンを選ぶときの特典の扱いは、借入先を絞り込む際に金利や諸費用などで差がないときで構わないでしょう。
住宅ローンの選び方7つのワナ
住宅ローンの選び方7つのポイントを解説しましたが、住宅ローンを選ぶ際に注意しておきたい点も紹介しておきます。先ほどの7つのポイントだけでは自分に合った住宅ローンを選ぶのは難しいので、この注意点も参考にしてください。
(1) 住宅ローンを「金融機関サイト」で選ぶ
各金融サイトの住宅ローンのページを見ると分かりますが、金利を強調している金融機関、保証料0を強調している金融機関、団信の保障内容を強調している金融機関など様々です。
金融機関サイトで強調している内容は必ずしもメリットにはなりません。たとえば「保証料0円」と大きく書いてあったとしても、「保証料0円」は珍しいことではなく、保証料ではなく事務手数料がかかります。同じく「一部繰り上げ返済手数料無料」とあってもほとんどの金融機関では無料です。
サイト上で目立つ内容だけをポイントにしてはいけません。金融機関のサイトが最も信頼性の高い情報源ですが、調べる際には、先ほどの7つのポイントを探すために訪問します。すぐに得するかどうかだけを探そうとせず、まずは基本的な情報を収集し、比較する準備をしましょう。
(2) 住宅ローンを「ランキング」で選ぶ
金融機関のサイト以外で、住宅ローンのランキングを掲載しているサイトがあります。他の人と同じ金融機関で借りたい、住宅ローンを選ぶ時間がないからランキング上位の金融機関でいいという人はいいですが、自分に合った住宅ローンを選びたい人はあまり参考になりません。
金利は、借入金額や返済期間、金利タイプ、手数料タイプなど様々な借入条件によって異なります。都市銀行など審査によって金利が異なる場合もありますので、ランキングで選ぶのは危険です。
ただランキングは調べる優先順位として活用することができます。複数のランキングサイトから上位の金融機関をピックアップし、その金融機関のサイトを訪問し、情報を収集します。
(3) 住宅ローンを「専門家ブログ」で選ぶ
住宅ローンについて解説しているファイナンシャルプランナーなどの専門家ブログがあります。基本的には署名入りの記事は参考になりますが、その内容が当てはまるかどうかは分かりません。
住宅ローンは、収入や年齢、ご家庭の考え方などによって選び方は異なりますので、説得力のある記事であっても当てはまらない場合があります。
(4) 住宅ローンを「増税前後」で選ぶ
住宅購入(建築)は、消費税など増税前に駆け込み需要があります。消費税の場合、土地は非課税ですが、建物には消費税が課せられます。建物2,000万円で、2%の増税であれば、40万円負担が増えることになります。
ただ住宅建築の時期が重なると人手や建築材料が不足し、建築価格が上昇することもあります。どの程度上昇するか見えにくいですが、その地域の不動産会社に問い合わせ、増税前後で物件価格に変動があるかどうか聞いてみるのもいいでしょう。
(5) 住宅ローンを「控除額」で選ぶ
住宅ローンを利用して一定の要件を満たせば、住宅ローン控除を適用し、所得税(住民税)の還付金を受け取ることができます。還付金の額が数十万円になることはよくあるため、上手に利用したい制度です。
たとえば共働き世帯の場合、借入金額の半分ずつを借り入れ、双方が住宅ローン控除を適用できれば、より多くの還付金を受け取れる可能性があります。
住宅購入費(建築費)の負担割合に応じて登記簿上の持分割合を合わせる必要があり、また万一離婚した場合にどのように分けるか課題になることがありますので、注意点を十分に確認してから借入方法を決めましょう。
(6) 住宅ローンを「住宅ローン」で選ぶ
住宅ローンを「住宅ローン」だけで選んでいないでしょうか。特に借入金額ですが、住宅ローンを選ぶ際の基礎となるのは将来の家計の分析です。家計の状況は個々に異なりますので、サイトで検索しても住宅ローンの情報ばかりで、家計との関連はあまり出てきません。
住宅ローンの特徴や比較にこだわりすぎて、住宅ローン商品の特性だけで選んでしまうと、根本的に家計に負担のある借り入れになっている可能性もあります。住宅取得は、少なくとも返済期間中の他の支出を予想し、無理のない返済をすることが前提です。
(7) 住宅ローンを「担当者」で選ぶ
返済負担のできるだけ軽い住宅ローンを選びたい人向けですが、住宅ローンを選ぶ際に絞り切れず、担当者のオススメやネットの情報で決めてしまわないようにしましょう。
ネット完結の住宅ローンのみしか扱っていない金融機関の場合、金融機関のサイト情報をよく読み、必要であれば問い合わせて不明な点を解決することになります。直接会って相談するのとは違い、勘違いしたまま手続きを進めてしまうことがあるかもしれません。
サイトに書かれていることも、一つひとつ確認し、必ず見積書で回答通りか照らし合わせましょう。最近は他行の住宅ローン商品を取り扱う金融機関が増えており、別の会社(フランチャイズ店)を案内される可能性もあり、住宅ローン選びが難しくなっています。
住宅ローン選びはご家庭で自ら何度もシミュレーションをして比較検討することが最も重要です。慣れないうちは時間がかかりますが、慣れてくれば住宅ローンのポイントが理解できるようになりますので、自分に合った住宅ローンを見つけるまで比較検討を繰り返しましょう。
まとめ
住宅ローンの選び方は正しく情報を把握することから始まります。シミュレーションは慣れるまで少し時間がかかり、大変ですが、できる限りご自分で納得できるまで住宅ローンを理解するために試算しましょう。そもそもサイトの情報がすべてではありませんので、借入先を3~5行ほどまで絞り込んだら、金融機関を訪問して直接相談しましょう。サイトに書かれていないお得な借入条件になるかもしれません。
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