民間介護保険の選び方
日本では長生きリスクとともに介護になるリスクもあります。そのため、平均寿命だけでなく、サポートなしで生活できる年齢を表す健康寿命にも注目する必要があります。そこで、将来、自分自身が介護状態になることへの備えとして何ができるか、ここでは介護保険の選び方について解説していきます。
公的介護保険の仕組み
民間の介護保険を探す前に、公的介護保険でどの程度保障されるのか確認しておかなければなりません。介護保険料は40歳から納付しますが、65歳以上を第1号被保険者、40歳以上を第2号被保険者としており、給付内容が異なります。65歳以上であれば、介護になった状態を問わず、介護の判定(要支援1・2、要介護1~5)をしますが、第2号被保険者は特定疾病に限り介護サービスを受けることができます。65歳までの対策も心配かもしれませんが、ここではあくまで将来の介護への備えを考えていきます。
介護保険サービスの体系
公的介護サービスは、介護状態によって受けられるサービスが異なり、重い状態の人ほど施設でのサポートサービスを受けることができますが、要支援などある程度自立できる人は訪問サービスが中心となります。
訪問系サービス
訪問介護 ・訪問看護 ・訪問入浴介護・居宅介護支援等
(例)ホームヘルパーが1時間、身体介護を行う場合
→ 1時間:3,940円
通所系サービス
・通所介護 ・通所リハビリテーション等
(例)通所介護(デイサービス)で1日お預かりする場合
→ 要介護3の方:8,980円
短期滞在系サービス
短期入所生活介護等
(例)短期入所生活介護(ショート)で1日お預かりする場合
→ 要介護3の方:7,220円
居住系サービス
特定施設入居者生活介護 ・認知症共同生活介護等
(例)特定施設(有料老人ホーム等)に入所する場合
→ 要介護3の方:1日当たり6,680円
入所系サービス
介護老人福祉施設 ・介護老人保健施設等
(例)介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に入所する場合
→ 要介護3の方:1日当たり7,760円
要介護・要支援認定者数と被保険者に占める割合
平成28年度末の数値ですが、第1号被保険者は3,440万人でそのうち要介護・要支援認定者数は619万人おり、全体の18.0%を占めています。そのうち、75歳以上が544万人(32.1%)ですので、遅くとも75歳以上の介護対策は必要になるでしょう。
※出典:平成30年度厚生労働省老健局「公的介護保険制度の現状と今後の役割」
介護保険サービス
介護サービスは大きく分けて、介護給付と予防給付があり、要介護1~5に認定されると介護給付、要支援1・2に認定されると予防給付を受けることができます。
介護給付
○施設サービス
・特別養護老人ホーム
・介護老人保健施設
・介護療養型医療施設
○居宅サービス
・訪問介護 ・訪問看護
・通所介護 ・短期入所 など
○地域密着型サービス
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・小規模多機能型居宅介護
・夜間対応型訪問介護
・認知症対応型共同生活介護 など
予防給付
○介護予防サービス
・介護予防訪問看護
・介護予防通所リハビリ
・介護予防居宅療養管理指導 など
○地域密着型介護予防サービス
・介護予防小規模多機能型居宅介護
・介護予防認知症対応型通所介護 など
介護保険サービスの利用者負担は1割
一定以上の所得がある人を除き、介護サービス費用の1割を負担しなければなりません。費用の1割ですので、介護の費用負担は軽減されていますが、希望するサービスを好きなだけ受けられるわけではありません。要介護状態の区分別に1ヶ月あたりの保険給付の上限額が設けられています。
要支援15,003単位(50,030円~57,034円程度)
要支援210,473単位(104,730円~119,392円程度)
要介護116,692単位(166,920円~190,288円程度)
要介護219,616単位(196,160円~223,622円程度)
要介護326,931単位(269,310円~307,013円程度)
要介護430,806単位(308,060円~351,188円程度)
要介護536,065単位(360,650円~411,141円程度)
※出典:杉並区ホームページより(平成30年3月末現在)
サービスを受けると費用の1割ですが負担があること、受けられるサービスには上限があることがポイントとなります。介護保険にも医療保険と同じく、高額介護サービス費制度があり上限額を超えた場合は払い戻される仕組みもあります。
・利用者負担は原則1割 ・受けられるサービスに上限がある ・高額介護サービス費制度、高額介護合算療養費制度がある ・介護サービスで十分かどうかが分からない。
介護に必要な費用
生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」によると、一時的にかかった費用の平均額が69万円、月額の費用平均が7.8万円となっています。月15万円以上かかった人が全体の15.8%います。介護状態が重いほど費用がかかると考えられますので、要介護5になった場合に備えるなら、月15万円の準備が必要と考えられます。ただこれも平均ですので、実際にはもっと必要かもしれません。
民間介護保険
ここでは各保険会社の介護保険商品を具体的に一覧にしております。ただ、介護保険は所定の介護状態になったら支払われるものです。貯蓄タイプの保険でも代用できる可能性もありますので、幅広く考えてみてください。「必要なときに現金がある」ことが重要となります。なお、介護保険や認知症保険など介護を目的とした商品がなければ「なし」としていますが、低解約返戻金型終身保険や個人年金保険などの取り扱いがあれば対応できる可能性があります。
※加入に際し、必ず各保険会社にお問い合わせください。
各保険会社の介護保険商品
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介護について総合的に考える
公的介護保険制度と民間介護保険の概要を見てきたところで、具体的に介護保険について考えていきます。大前提として、介護保険に限らず、将来何が起こるか誰もわかりませんので、今考えている対策が空振りに終わることもあります。その時は、状況に合わせてできる限りの対応をするしかないでしょう。それが嫌なら、介護費用を最優先して準備することになります。
1 保険料の上限を決めて、その範囲内で決定する
保険料にあてる資金が十二分にあればだれも迷いません。そこで、たとえば家計の状況や今後の支出予測から、月々の保険料として支払える予算を決めます。たとえば月2万円なら、2万円のなかで死亡保障や医療保険、自動車保険などすべての保険料の内訳を考えていき、介護保険に加入することができるか、他の保険と比べて優先的に加入すべきか考えます。
予算がありますので、保障の取捨選択が必要となります。たとえば死亡した時の保障はやめ、長生きリスクに備える保障に優先的に加入する方法があります。もちろん、ご夫婦のどちらかが亡くなったときの対応も考えた上で選ばなければなりません。勤務先や家計の状況によっても左右されますので、十分検討する必要があるでしょう。
2 介護保険にこだわらない
繰り返しになりますが、将来の介護費用に備える場合、介護保険だけが選択肢になるとは限りません。本質的には、「65歳以上の収入や貯金を殖やす」ことが目標です。そうすると、介護保険と他の保険を比較しなければなりませんが、ポイントは次のとおりです。
・支払事由:所定の要介護より緩やかか厳しいか
・受取額:保険料総額と比べどのくらい多くの保険金・給付金を受け取れるか
介護保険であれば、要介護1以上や独自の判定など支払事由があります。個人年金保険や低解約返戻金型終身保険なら、所定の年齢に達すれば保険金を受け取ることができます。保険金・給付金を受け取れる条件が緩やかか厳しいか比較しておく必要があります。
また支払う保険料と比べて受取額はどのくらいになるかも確認しなければなりません。
3 保険にこだわらない
そもそも保険で準備しない方法もあります。一定の譲渡益や配当金が非課税となるつみたてNISA、所得控除などの税制優遇が豊富なiDeCoを利用した資産運用です。介護保険に加入すると介護にしか対応できませんが、お金であれば、その時々で様々な支出に対応できます。ただ普通預金に預けているだけだと物価変動リスクにより資金が目減りしてしまう可能性がありますので、税制優遇を上手に使った運用をする方法です。
「介護保険の選び方」まとめ
ここまで介護保険を中心に解説してきましたが、将来の介護費用をどのように工面するか、介護状態になったときにどうするかは考えて見てください。多くの人は、無意識にお子様の誕生で死亡保障に加入するかもしれませんが、本当に周りに合わせた商品選びでいいのか、将来のことですので、自信をもぅて選ぶのは難しいですが、ご家庭で話し合ってみましょう。
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