外貨建て終身保険
保険商品には外貨建てで運用されるものがあります。低金利が続いていることもあり、外貨建ての利率に魅力を感じ、加入を検討している人もいらっしゃるでしょう。特に外貨建て終身保険を検討する際の判断材料の一つを紹介します。
外貨建て終身保険の基本的な特徴
終身保険は貯蓄性のある保険で、一般的に保険料支払い期間満了後には解約返戻率が100%を超えます(契約状況によっては期間満了後、一定期間が必要)。終身保険は死亡保障ですので万が一に備えた保険ですが、解約することで解約返戻金を受け取れるため、資産運用として活用されています。積立利率が高いほど解約返戻率も高くなりますが、円建て終身保険の積立利率がゼロであるため、外貨建て終身保険に注目されるケースがあります。
外貨建て終身保険は積立利率が高い反面、円建て終身保険にはない為替変動リスクを負うことになります。円建て終身保険よりも積立利率は高いとは言え、以前と比べると下落傾向になります。外貨建て終身保険に加入するタイミングによっては為替差損が発生し、想定していた解約返戻金を受け取れない可能性もあります。そこで積立利率と為替相場の推移を確認しておきましょう。
為替相場と保険会社の積立利率
外貨建て保険を検討する際、為替相場と積立利率の推移は必ず確認しておく必要がある。積立利率は、保険料のうち運用に回された保険料の運用利率である。今回は、メットライフ生命の積立利率を参考にするが、メットライフ生命は最低3.0%の保証があるため、積立利率だけを比較すると、円建て保険よりかなり魅力的である。
円/米ドルレートは日米の経済状況によって変化する
為替相場を決定する一つの要因として、「購買力平価」という考え方がある。これは「同じ商品は同じ価格」というとらえ方で、たとえば同じハンバーガーが日本では100円、米国では1ドルで販売されていれば、為替相場は1ドル=100円となる。
為替相場と金利
米国の金利が日本の金利に比べ相対的に上昇した場合、お金は金利の高い方に流れる。日本円を売って米ドルを購入する量が多くなるため、円安ドル高傾向となる。これが一般的な為替相場と金利の関係だ。(図)を見ると、円安ドル高になっていても積立利率は上昇していない。2012年から2015年までに円安米ドル高が進んだにも関わらず、積立利率は下落している。保険会社の設定する積立利率だけでなく、米国の金利と為替相場の関係も強い相関が見られないが、この点は客観的データがそろい次第検証したい。
外貨建て保険の加入が有利な時期
外貨建て保険の積立利率は保険加入期間中も見直されるため、加入するタイミングを計る要因とはならないが、為替相場は違う。円高米ドル安のときに加入し、円安米ドル高のときに保険金を受け取れば、積立利率の変動に関係なく、為替差益が得られる。このごく基本的な為替相場と金利の知識を踏まえれば、2012年の円高米ドル安のときが最も外貨建て保険の加入に向いている時期だったと言える。2019年の為替相場を見ると、過去と照らし合わせれば円安米ドル高傾向であるため、有利とは言えないが、今後どのように動くか分からないため判断はできない。ただ少なくとも外貨建て定期預金のように短期で引き出せる商品ではないため、為替変動によるリスクは考慮しなければならないだろう。
メットライフ生命には最低保証があるため、運用益にも期待できる。ただ保険会社の積立利率を見る場合、注意すべき点もあるため紹介する。
積立利率とは
メットライフ生命による積立利率の説明は以下のとおりである。
積立利率について
●積立利率とは積立金に付利する利率のことをいいます(保険料に付利する利率ではありません)。
●積立利率は毎月1日に設定されます。設定された積立利率は、1ヵ月間、積立金に付利し、積立金を増加させます。毎月の積立利率は、その前々月のこの保険の運用実績から資産運用のための運営費率、積立金を最低保証するための保証費率、その他費用を差し引いた利率となります。
●積立金からは、死亡・高度障害保障のための費用などが毎月控除されます。
そのため、積立金がそのまま積立利率で運用されるものではありません(積立利率は実質利回りを示すものではありません)。
※控除される費用は、保険金額・契約年齢・性別・経過期間などによって異なりますので、一律には記載できません。
積立利率は年3.00%が最低保証されています。
(出所)メットライフ生命「積立利率」
加入を検討している人がおさえておきたいポイントをまとめると次のようになる。
・「保険料 × 積立利率」ではなく、「積立金 × 積立利率」である。
・積立利率から、運営費率、保証費率、その他費用に関する利率を差し引く。
・積立金から、毎月費用が控除される。
つまり、積み立てている金額とその金額にかかる利率はわからないことになる。
積立利率の最低保証から運営費率等が引かれるため、実際には3%を切ることもありうる。
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